準天頂衛星みちびきの運用が開始されたが今使っているランニングウォッチの精度は向上するのか?

試験運用中だった日本の衛星測位システムのみちびき(準天頂衛星システム)がいよいよ11月1日よりサービスが開始されました。

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みちびき3号機・出典:qzss.go.jp

GPSなどの衛星測位システムに対応したランニングウォッチやスマホなどのモバイル端末を利用すると走った距離やスピードなどを簡単に計測出来ます。


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Garmin Fenix5 のVer9.53のソフトウェアから米国のGPSや日本のみちびき、ロシアのGLONASS以外に欧州のGALILEOにも対応


最近ではGPS以外にみちびきにも対応という製品が増えています。

僕が愛用しているガーミンフェニックス5もみちびきに対応してます。


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Garmin Fenix5 Sapphire Edition

みちびきに対応してると物凄く精度が高くなるって本当かニャー?


みちびきが利用できるようになると数センチ以内という驚異的な精度になるとか、いやいや数メートル以内だよ、何言ってんのあんた!今までと一緒とか色んな情報が出回っていてどれが本当なのか良くわかりません。


そこでみちびきが運用されると現在使っているみちびき対応のランニングウオッチの精度が向上するのか詳しく調べてみました。

みちびき(準天頂衛星システム)とは

出典:みちびきウェブサイト

みちびきとは|みちびきについて|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

みちびき(準天頂衛星システム)とは、日本の衛星測位システムのことで、英語ではQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)と表記します。

衛星測位システムとは、衛星からの電波によって位置情報を計算するシステムのことで、米国のGPSがよく知られており、みちびきを日本版GPSと呼ぶこともあります。


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GPS互換であるみちびき・出典:qzss.go.jp

みちびき(準天頂衛星システム)が提供するサービス

出典:みちびきウェブサイト

「システム概要」一覧|技術情報|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府


みちびきでは次のようなサービスを提供してます。

衛星測位サービス、サブメータ級測位補強サービス、センチメータ級測位補強サービス、災害・危機管理通報サービス、衛星安否確認サービス(Q-ANPI)

衛星測位サービス

出典:みちびきウェブサイト

衛星測位サービス|みちびきについて|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

みちびきは、GPSと同じ測位信号(L1C/A、L2C、L5)を送信し、GPSと時計を同期させるため、GPS衛星が増えたものとして利用することができます。

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GPS互換という理由がこれです。


みちびき対応と謳っているスマホ、タブレットパソコン、カーナビ、ランニングウオッチなどの受信機はL1C/A信号に対応してます。

準天頂軌道の衛星は日本付近からは仰角20度以上に約16時間留まるため、みちびきの4機体制により、GPS衛星とあわせてこれまで以上の数の衛星が見えるようになり、マルチパスと衛星配置の誤差を改善し、ビルや樹木などで視界が狭くなる都市部や山間部でも、測位の安定性が向上します

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みちびきはマルチパスの影響が少ない・出典:qzss.go.jp


マルチパスとは衛星の信号が樹木やビルなどに反射して受信機に届くまでの時間が遅延して誤差が発生することです。

センチメータ級測位補強サービス

センチメータ級測位補強サービスの誤差はわずか数センチ!!

出典:みちびきウェブサイト

センチメータ級測位補強サービス|みちびきについて|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

高精度な衛星測位を行うため、国土地理院の電子基準点のデータを利用して電子基準点を用いて補正情報を計算し、現在位置を正確に求めるための情報(センチメータ級測位補強情報)をみちびきから送信します。センチメータ級測位補強を送信するL6信号は、GPSから配信している信号ではないため、専用の受信機が必要になります。

このサービスは、測量、情報化施工(建設機械を高精度に操作して施工する手法)、IT農業(農機を高精度に操作して農地管理をする手法)での利用を想定しており、L6信号を受信することができる端末で利用することができます。また、搬送波測位という測量技術による手法を用いるため、アンテナや受信機のサイズは大きくなることから、モバイル機器ではなく、測量機材としての利用や車載での利用を想定しています。


大きく高価なアンテナや受信機が必要なために今のところモバイル機器での利用は想定されていません。

サブメータ級測位補強サービス

サブメータ級測位補強サービスの誤差は1m以下です。

出典:みちびきウェブサイト

サブメータ級測位補強サービス|みちびきについて|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

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提供:内閣府宇宙開発戦略推進事務局

一般に、GPSなどによる1周波の衛星測位では、誤差は10m程度になると言われていますが、サブメータ級測位補強により、誤差1m以下で測位を行うことが可能となります。

このサービスは、主に歩行者・自転車や船舶などのタイムラグの影響を受けにくい利用者を想定しており、自動車で利用する場合には、他のセンサーと組み合わせて利用することが望ましく、ドライブレコーダーのように精度のよい位置情報を記録する場合にも用いることができます。L1S信号を受信することができる端末で利用することができますが、補強情報を常時受信し続ける必要があるため、モバイル機器で利用する場合には、バッテリーが課題となり、ハンディナビのような専用機器を想定しています。


補強情報を常時受信し続ける必要があるためにバッテリーの持ちが悪くなるのでランニングウォッチの様な小さなモバイル機器での実用性が難しい。

MASAのゴルフウォッチはウェアラブル端末としては世界初のL1S対応製品となります。


みちびき対応製品

出典:みちびきウェブサイト

みちびき対応製品リスト|利用者向け情報|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

デジカメ・時計・スマホ・タブレットPC・カー用品などがL1C/A(衛星測位サービス)に対応してます。

ランニング・アウトドアウオッチではスント(SUUNTO)
が対応してません。

スント(SUUNTO)よりガーミンの方が精度が高いと言われるのも納得です。

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みちびき対応製品リスト(http://qzss.go.jp/usage/products/list.html#clas-slas)から抜粋

結論

現在使用中のランニングウオッチでのみちびき運用で期待できる精度は次の通りです。


 ビルや樹木などで視界が狭くなる都市部や山間部でも、安定した測位を行うことができるようになる


 衛星が沢山見える視界の良いところでも測位誤差が改善される


1m未満とか数センチ未満という高精度の測位誤差にはならない



みちびきが4機体制になり、GPSと併せてこれまで以上の数の衛星が見えるようになり、ビルや樹木などで視界が狭い都市部や山間部でも、安定した測位を行うことができるようになるので精度は上がります。


例えば高層ビルが立ち並ぶ都市部などの視界の悪い場所でGPSだけで測位した場合に数十メートルだった誤差がみちびきと併用する事により本来の測位誤差の10メートル程度になるといった感じです。


みちびきは、日本の上空に長く滞在できる準天頂軌道という特殊な軌道と、赤道上空の静止軌道に、GPSと互換性のある信号を出す衛星を配備してGPSを補完します。これにより、従来より1割ほど安定が増します。


ただし、みちびき対応と謳っているランニングウォッチで1m未満の測位精度(サブメータ級測位補強サービス)、数センチ未満の測位精度(センチメータ級測位補強サービス)の信号の受信に対応している製品はありませんので従来通りの10m程度の精度のままです。



10m程度の精度のままなのニャー


ちなみにガーミンフェニックス5の場合はVer9.53のソフトウェアから米国のGPSや日本のみちびき、ロシアのGLONASS以外に欧州のGALILEOにも対応しており衛星信号が強い場所で約3mの精度が期待できます。

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